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  • 執筆者の写真nishida

墓地の木々

前回のブログで防風林について取り上げましたが「防風林について」 。 都市域では防風林というのもあまり見かけなくなってきているのではないかと思われます。 そんな中で私達に多いご依頼の中から墓地の木々について取り上げたいと思います。

 さて、墓地と一言に言っても色んな墓地がありますが、どういう訳か墓地の周辺か中には必ず木が生えています。ご依頼の多くはこうした木々の落ち葉処理の一環や風倒被害を予測された結果、伐採や剪定を行うというものが多いのですが。 では何故こうした面倒を抱えても墓地に木々が存在し続けるのでしょうか? 

 


・防風林として植栽されている

 墓地は小高い丘に存在する事もあり、風当たりが強く墓地内に及ぼす風の影響を軽減する目的で生かされているケースです。 この樹種選定については必ずしも防風林に向かない木々もあり、もし暴風対策で今後もご活用される場合は人工的な遷移をお勧めしたい墓地もありました。

防風林の樹種選定については前回ブログ「防風林について」を拝見していただければと思いますが。 墓地の場合、単なる防風林と違い根茎の発達が墓石に影響を及ぼすこともあり古くからある木々を防風林として利用しているケースだと注意が必要です。 この根茎が及ぼす力ですが、京都の二条城の石垣にある巨石群が根茎の発達で動くほどです。 ある程度の樹高にならなければ防風林としては機能しないと思われますので、熟慮を要すると思われます。


・先祖が眠っているから

 ある寺院では草さえ抜くのを憚るご依頼もありました。 また、こうした折は「自然に生えてきたものだから木が枯れるまで待つ」という選択肢を選ばれる方も多く、そうした場合枝の強剪定というご対応になります。 また、こうした理由から様々な開発を免れて植生維持に貢献している古いお墓もあるようです。「古い墓地は草原の植物をまもっている」 兵庫県立大学大学院の澤田佳宏氏のコラムではこうした理由により半自然性植物が古い墓地で生き続けていると書かれています。


・大寺院の墓地

 例えば金剛峯寺の奥の院や延暦寺の境内など、境内に歴史的巨木群が代表的な寺院には多く見られます。 こうした木々の中には支持強度が落ちた個体も複数見受けられ、以前その件である僧侶の方とお話させていただいたのですが。 多数お話させていただいた中で痛烈に印象に残ったお言葉に「霊木があって寺がある。たとえ書院(重文)が潰れても霊木を切るよりは良い」と仰ったのには驚きました。 さすがです。 間違いなくこうしたお考えは他の寺院に影響を及ぼしてきた可能性はあります。 


・美観

 低木性の木々を植栽されるケースを見かけます。 こうした墓地は新しく切り開かれた墓地であることが多いのではないでしょうか? それらはツツジやサツキをはじめ美観を形成する樹種であり、あらかじめゾーニングされた墓地である事から古い墓地とは違った景観が広がっています。

 





 以上、過去にあったご相談やご依頼の中からいくつか整理してみました。日本の仏教観とアニミズムとの関係性については様々な見解が存在しますが、植物に対して何某かの霊性を認めたうえで先祖や肉親の死に関連性が生まれているように印象を受けます。 

 ちなみに、少し前から樹木葬を行う寺院も増えてきました。 これについてはまた改めて書きたいと思います。






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